シリーズ 乳牛の分娩前後の低カルシウム血症(乳熱)を考える「第四回 乳牛のCa要求量の計算」

私達は、Ca要求量を、電卓で計算できる「日本飼養標準乳牛2017年版」の算定式を用いて検証しています。

要求量は上の式に当てはめれば計算できます。

注意しなければならないのは、給与量の計算時、給与するCa剤の「Ca含有率」と「Ca吸収率」です。含有率が記載されていない場合は、販売店に確かめる必要があります。使用方法に「1日○g給与」というように書かれているものは、乳量を考慮していないので、乳量とそのCa剤のCa含有率から給与量を確かめる必要があります。おおよそのCa吸収率がNRC2001年版に示されています(表4-1)。

例えば、体重650kg、乳量が50kg、乳脂肪4%の泌乳牛の場合、

・維持要求量Ca(g)=0.0l54×650kg÷0.38=26.3g

・産乳要求量FCM=50kg×(0.15×4+0.4) =50

・Ca(g)=1.20×50÷0.38=157.9g

・合計要求量26.3g+157.9g=184.2g

これをCa含有率40%、Caの吸収率75%の炭酸Caで全量給与すると、184.2g÷40%÷75%=614gを給与しなければならないことになります。

また、体重700kgの分娩2週間前の乾乳牛の場合は、

・維持要求量Ca(g)=0.0154×700kg÷0.38=28.4g

・妊娠末期に加える要求量Ca(g)=0.0078×1.23×700kg÷0.38=17.7g

分娩2週間前なので、この値の120%が要求量となり17.7g×120%=21.2g

・合計要求量28.4g+21.2g=49.6g

これを炭酸Caで全量供給すると、49.6g÷40%÷75%=165.3g必要だということになります。

後で述べますが、乾乳後期のCa過剰給与は危険ですので、その配慮が必要です。