妊娠後期のDFAⅢ給与が乳用牛の初乳中IgG濃度に及ぼす影響について
妊娠後期(乾乳期)の牛にDi-Fructose-Anhydride Ⅲ(DFAⅢ)給与し、初乳中の免疫グロブリンG(Immunoglobulin G:IgG)濃度に及ぼす影響について調査した結果を報告します。
そもそも初乳中のIgG(初乳中IgG)はどこで作られるのでしょうか?
IgGは、免疫細胞の1種である形質細胞が作り出します。
この形質細胞は、主に骨髄に多く、分娩が近づくと一部が乳腺に集まります。
初乳中IgGは、①骨髄の形質細胞で作られたIgGが血液を介して乳腺に移行したもの(骨髄由来IgG)、②乳腺に集まった形質細胞が作ったもの、の2種類があると考えられています。
図1は、ホルスタイン種経産牛の乾乳期間から分娩日までの血液中のIgG(血中IgG)濃度の変化を示します。血中IgG濃度は、乾乳期にあたる分娩56日前および分娩14日前と比較して、分娩日に大きく低下し、「骨髄由来IgG」が血液から初乳へ移行したと推察されました。さらに、この低下の程度は、2産次と3産次以上で差があったことから、「骨髄由来IgG」の量が産次によって異なる可能性が考えられました。
そこで、初乳中IgG濃度に対するDFAⅢ給与の影響について、2産次と3産次以上を比較してみると、2産次においてDFAⅢ給与群の方が初乳中IgG濃度が高く、3産次以上では差のないことが分かりました(図2)。
また、DFAⅢにはカルシウムなどのミネラルの吸収を促進する効果があることから、初乳中のミネラル濃度を調べたところ、2産次において初乳中マグネシウム(Mg)濃度がDFAⅢ給与群で高いことが分かりました(図3)。
さらに、初乳中のMg濃度と初乳中IgG濃度には、産次やDFAⅢ給与の有無に関わらず、正の相関(正比例関係)があることが分かりました(図4)。
以上の結果から、
2産次を迎える初産牛の乾乳期間にDFAⅢを給与すると、飼料中のMgの吸収が促進され、初乳中IgG濃度が高まる可能性が考えられました。
なお、Mgと初乳中の骨髄由来IgGとの関係については、今回の調査では明らかにできませんでした。
一般に、産次の低い若齢牛ほど初乳中IgG濃度が低い傾向があったり、乾乳期間中の栄養不足など、初乳中IgG濃度を低下させる要因には様々ありますが、今回明らかにできなかった点を含め、乾乳管理から初乳の質を改善する方法について引き続き研究を進めます。
DFAⅢが含まれる乾乳期用配合飼料はドライⅢ17がございます。