乳牛の暑熱ストレスに対するベタインの給与効果
暑熱対策の必要性が年々高まってきています。対策としては施設面、または飼養面からのアプローチが考えられます。ビートから分離精製される機能性成分ベタインについて、ニッテン配合飼料では脂肪代謝を促進する機能に着目した製品(かんぞう奉仕)を取扱っておりますが、他にも様々な作用を有しています。今回は飼養面からのアプローチとして、ベタインの暑熱ストレス軽減作用について検証した事例を紹介します。
「ベタイン給与は暑熱ストレス下にある乳牛の乾物摂取量、乳量、乳成分を向上させる」
(Ali Mujtaba Shahら:Animals 2020, 10, 634)
ベタイン(トリメチルグリシン)は乳牛の暑熱ストレスに対し、エネルギー消費を抑えることで暑熱ストレスを軽減し、代謝熱産生を抑え、浸透圧バランスを維持する可能性があることが示唆されています。本事例では、暑熱ストレス下の乳牛にベタインを1日1頭当たり15、30g給与し、泌乳成績、ルーメン発酵、抗酸化プロファイルに与える影響が調査されました。
結果を表1,2および図1に示しました。泌乳成績は、乾物摂取量および乳量の増加、体細胞数の減少が認められました。ルーメン発酵については、ルーメン内の酢酸/プロピオン酸比の上昇、アンモニア態窒素の減少および微生物態蛋白質の増加が認められました。また、血液中の遊離脂肪酸(NEFA)濃度が低下しました。ルーメン発酵については、ベタインがルーメン内微生物の窒素やメチル基の供給源となる事や、微生物に好ましい浸透圧を保つことで飼料の消化率を向上させ、泌乳成績の向上につながったと考えられました。牛のエネルギー利用の指標となる血液中NEFA濃度が低下したことからも、エネルギー利用能力の向上が示唆されています。これらのことから、ベタイン給与が暑熱ストレスを低減させ、エネルギー代謝効率と乳生産性を高めたと考えられました。