酵母の給与と乳生産の関係
ウシに対する酵母菌の給与は50年以上の歴史があり、酵母の給与についての試験研究も数多く行われています。「私たちの強み~イースト菌~」でも解説している様に、基本的には嗜好性の向上、健康状態の改善、乳量の増加といったプラスの効果があると言われています。一方で、給与効果は無かったと結論付けている論文も見られます。
実際に給与効果はあると言えるのかどうか、過去に蓄積された試験研究結果をメタ解析した論文をご紹介します。
「泌乳牛に対する酵母製品給与と乳量の関係性 マルチレベルメタ解析とメタ回帰分析 (A.Abdelliら、Animal Feed Science and Technology 2022)」
乳量に及ぼす酵母の給与効果に関する49論文99試験を解析した結果、酵母の給与により次の効果のあることが示されました。
・採食量を上昇させずに乳量を増やす。
・採食量を増やすよりも飼料の利用性を向上させる。
・ルーメン内の微生物活性を高くする(VFAの増加)
・乳量を増やす。最大0.87㎏/日 ※活性酵母は最大1.10kg/日
・乳脂肪率を高める。0.06%の上昇
・乳脂肪量を増やす。0.03㎏/日の増加
・乳蛋白量を増やす。0.02㎏/日の増加
・分娩前から酵母を給与すると効果が高まる。
・給与内容が低ADF、高デンプン、低蛋白であるほど効果が高い。
以上の結果から泌乳牛への酵母の給与は、ルーメン内の微生物活性を高くすることで飼料の利用性を向上させ、採食量を上昇させずに乳量を増やすことが示されました。